キャンプを始めたころ、「テント設営時などに付属のペグが折れてしまった」なんてこと皆さんは経験したことがあるのではないでしょうか?
経験したことがある人はその後、最も強度の高い”鍛造ペグ”という終着点に行きついたのではないかと思います。
今回は、そんな鍛造ペグの中でも最も強度が優れているといわれる”エリッゼステーク”。通常エリステ。
今回の記事では、普段機械系の設計エンジニアをしており、金属部品の検討を日常的に行っている私が、エリステの強度について考察をしていきたいと思います。
エリッゼステークとは?
知らない人のために、まずはエリッゼステークの説明から。
エリッゼステークとは、新潟県三条市にある”村の鍛冶屋”という鍛冶屋さんの鍛造ペグです。
新潟県三条市は近辺の川で優良な砂鉄が取るため、古くから「金物の町」として、全国的に知られています。
エリッゼステークもそんな金物の町の匠たちの技を用いて作られています。

ちなみに鍛造とは、鉄の加工方法のひとつで、ペグの元となる鋼材を熱し、たたいて成形していく加工方法です。
方なの作り方も鍛造なので、そちらをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
素材をたたいたりすることによって、材料内の隙間がつぶされたりするため、通常の座量に比べて強度が優れたものになるのです。
気になる強度は?

公式のホームページに、強度についてのデータが記載されていますが、
曲がり始めの応力は
- エリッゼステーク横方向:3kN
- エリッゼステーク縦方向:4kN
- エリッゼステークアルティメット横方向:8kN
- エリッゼステークアルティメット縦方向:10kN
とかかれています。(楕円形上のペグのため、縦、横で強度が異なります。)
何となく強そうな感じがしますが、専門の方以外にとってはなんのこっちゃと思うかもしれないので、詳しく説明します。
ちなみにエリッゼステークアルティメットとは、「焼入れ」という熱処理を行いより強度を高めたペグになります。
いうなれば鍛造ペグ界の「ウルツァイト窒化ホウ素」といったところでしょうか。
ウルツァイト窒化ホウ素とは?
地球上でもっとも硬い物質。とにかく硬い。
少し強度についてお勉強

先ほどのグラフですが、材料の強度を表しているグラフになります。
横軸が変位、縦軸が試験力となっているので、”エリッゼステークに力を加えたときにどれだけ変形したか”を表しているグラフになります。
そして強度がそれぞれ
- エリッゼステーク横方向:3kN
- エリッゼステーク縦方向:4kN
- エリッゼステークアルティメット横方向:8kN
- エリッゼステークアルティメット縦方向:10kN
となっているので、各強度の数字で横線を引いてあげると、以下のになります。

よく見ると、ちょうど曲線の傾きが変わるところあたりに来ていますよね?
この傾きが変わる点を降伏点(こうふくてん)といって、これ以上の傾きを掛けると、鉄が元に戻らなくなります。

ばねをイメージするとわかりやすいですが、ばねを弱めの力で引っ張ってあげて、そこから手を離すと元の位置に戻りますよね?
逆にばねを思いっきり引っ張ると、元に戻らなくなりますよね?
鉄なども同じような性質を持っていて、ペグの場合だと曲がったまま戻らない状態になってしまいます。
我々機械系のエンジニアたちは、瞬間的にかかる力が、この点を超えないように考えて日々設計しています。
2kNってどれくらい?

お勉強タイムはこの辺にして、話をもとに戻していきます。
先ほどの説明で、エリステは2kNの力で変形してしまい元に戻らないということがわかりました。
では2kNとはどれくらいの数字なのかということを簡単に説明します。
Nというのは力の大きさを表す単位で、一般的に1Nとは100gの物体にかかるおおよその重力を指します。(厳密には101.936…g)
ということで、2KN(2000N)というのは100(g)×2000=200kgの物体にかかる重力と同じなわけですね。
ちなみに成人男性がハンマーを使ってくぎを打つときにかかる力は50N程度といわれています。
これは5kgの物体にかかる重力と同程度です。
この数値からわかるようにエリステは、生半可な気持ちではまず壊すことが出来ません。
軽い気持ちでペグうちをするなという思いの表れかもしれませんね。
まとめ
今回はエリステをエンジニア的な視点で考察してみました。
結論マジ強度半端ないです。
強いは正義という言葉があるように、一度買ってしまえばまず壊れることはないかと思います。
少し値段が張るからと悩んでいる方は、さっさと買ってしまった方がいいでしょう。